<< 誰もが | main | 外出の記憶 >>

あの時の私

先日、私が仕事から自宅のマンションに戻ると、エントランスで小学生の女の子が心細そうにしていました。
同じマンションの住人として会えば挨拶するし、その子の親御さんとも会えば少し話す程度の関係の子でした。
うちのマンションは鍵を持っていないとエントランスに入れない仕組みなので、おそらく鍵を忘れてきたかなんかなんだろうなとピンと来ましたが、とりあえず私は自転車に乗っていたので先に駐輪場に入りました(駐輪場も鍵がないと入れない)。
私が自転車を仕舞っていると、その子がおずおずと駐輪場に入ってきて、私から少し離れたところでもじもじしていました。
これはもう絶対そうなんだな。

「鍵、ないの?一緒に入ろうか」

声をかけると、女の子は気が緩んだように涙ぐんで私の方に来てくれました。
しかしマンションの建物に入れたところでその子の家の鍵はないわけで、そしてご両親は留守でした。
キッズケータイも持っていないようだったので、

「お母さんの電話番号わかる?私の電話貸してあげるから、かけてみな」

と言って電話をかけさせてみました。
お母さんは出てくれましたが(知らない番号からの電話なのに出た瞬間「Rちゃん?」と娘さんの名前を呼んでいてお母さんスゲエって思いました)、車で出かけていて、帰るまでにはもう30分くらいかかりそうだとのことでした。
うーんこれはもう仕方ない。電話を代わってもらいました。

「もしもし。○○号室の神崎です。差し出がましいようですが、うちでお嬢さん少しお預かりしましょうか」

お母さんは恐縮してらっしゃいましたがとりあえず話がまとまり、Rちゃんを我が家に連れて行きました。死ぬほど散らかっていたけどもう…仕方ない………。日頃から片付けはしよう………(反省)。
最初は少し緊張していましたが、話をしたりおやつを食べたりしている間にだんだん打ち解けて、ついでに怖がりのうちの猫が珍しく出てきたもので「かわいい!」と喜んでくれました。
(…おやつ食べてないの可哀想だよなあと思ったんですが、出す前に「アレルギーある?」と聞いたら「ピーナッツ」との返答で、おお怖えって思いました。聞いておいて良かった……元々それほど怖いものを出すつもりもなかったのですが、お母さんそこんとこの教育をしっかりしてくださってってありがとうございます。最近怖いですな。成分表示をしっかり見て、問題ないおやつを少しだけ出しました。まあこれは各家庭の判断によるところで、これが正しかったかどうかはわかりません)


お母さんは道が混んだりして結局予定の時間を少しオーバーして帰ってこられたのですが、「ほんともうすみません申し訳ありませんありがとうございました。Rちゃんもよくお礼を言って!」という感じだったので、こちらも預かってよかったと思いました。
このご時世、同じマンションって言ったってよく知らない人の家に子供が一人でいるとなったらそれは心配だけど、でも外でずっと待ってて変な人に声かけられたりするよりはマシだろうという判断だったんでしょうね。お母さんとしてはそこそこ賭けだったと思います(まして娘さんなら)。
日頃から近所の人に挨拶はしておくものですね。
お母さんから「もし、そちらの息子くんが同じようなことになったら、今度はうちでお預かりしますから!」と心強いことを言ってもらえて嬉しかったです。数年後やらかしそうなのでよろしくお願いいたします。
今回の原因としては、いつもはランドセルに鍵をつけているのだけど、この日は遠足かなんかでリュックで行っていたので鍵をつけ忘れていたことだそうです。なるほど。


という、この令和の時代に珍しく昭和な感じの出来事があったという話なんですが、私は私で懐かしいなと思いまして。
私も鍵を持っていなくて家に入れなかった時に、普段挨拶くらいしかしない隣のおばさんが「うちで待ってる?」と誘ってくれたことがありました。
とてもありがたかったのですが、黙っているおばさんと二人きりで何を話したらいいのかもわからず、テレビがついていたけれどもワイドショーかなんかでちっとも面白くなくて、しまいに「たぶん、ママもう帰ってきてると思う!」と言って帰った(実際母が帰ってきていたかどうかは忘れました)ということをなぜかずっと覚えていました。
Rちゃんはあの時の私でした。
私はあの時どうして欲しかったんだろうと思いながらRちゃんに接していて、あれこれ話題引き出しを試して「動物の話」を出した途端饒舌に、そして笑顔になったRちゃんを見て「そうか、私はあの時安心させて欲しかったのか」とやっと気づいたというか、あの時の気持ちを言葉にすることができました。
なんだかあの時の私に会って、自分で助けてあげられたような妙な満足感とタイムマシンに乗ったような不思議があって、書いておこうと思った次第です。
良かった。
かんざき * 日常アレコレ * 00:05 * comments(0) * - * - -

コメント

コメントする









このページの先頭へ