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ヒロシマ

小学生の頃、ズッコケシリーズをよく読んでいました。
本編も面白かったのですが、作者の那須正幹先生のあとがきも面白くて、何度も読んでいました。
それからのち主人公たちと年代が合わなくなったのでズッコケシリーズを卒業し、なんとなく那須先生は児童文学の作家さんだと思い込んでいてご無沙汰していたのですが(ズッコケシリーズの完結作は買って、ラスト相当泣いたけど)、近年ふと本屋で「ジエンドオブザワールド」を見つけて読み、大人向けの話も書く作家さんだったんだなと今更認識を改めました。
そしていつの間にかズッコケシリーズは大人になった三人組の「ズッコケ中年三人組」シリーズが年一回刊行されていて、既に10年の時を経て完結していたという有様。
今少しずつ文庫化されているので、楽しみに購入しております。

…と、前置きが長くなりましたがその「ズッコケ中年三人組」の巻末で那須先生の他の本の紹介がありまして、それがタイトルの「ヒロシマ」だったわけです。
那須先生が広島の出身で、3歳の時に被爆されたということは存じ上げていました。
その体験の話なんだろうか。それにしては3部作で、主人公は女性らしい。
タイトルだけしか分からず、とりあえず1巻を読んでみて面白かったら続けて読もう…と思って読んでみました。

物語は1949年の広島から始まり、主人公は自身も被爆者であり、またその原爆で未亡人となった市橋靖子という女性でした。
まだ幼い娘が一人いて、実家に身を寄せてなんとか駄菓子屋を営んで生活しているという、おそらくその時代に生きていた普通の人なんだろうと思いました。
ふんふん、と読んでいて私はすぐに全巻まとめて買わなかったことを後悔しました。1巻も近所の書店になかったので注文して届くまで数日。1巻はその日のうちに読んでしまいました。
2、3巻が手元に届くまでがこんなにも長く感じる小説は久しぶりでした。
血湧き肉躍る冒険譚でもなければ殺人が繰り返されるミステリーでもなく、ただの人生をまったく無駄のない文章で書いているこの物語がどうしてこんなに面白いのか不思議でなりません。
しかし無駄がないように見えて、端々に丹念な取材をしたあとや那須先生が実際に体験したことがみえる丁寧な小説でした。
たった3巻、しかもそれほど分厚くもない小説で実に60年以上の歳月が流れるのですが、巻いたり端折ったりという感じはしないのに淀みなく流れ、読んだ後には大河ドラマを1年追いかけたような、そんな清々しい感動を覚えました。
詳しい感想はネタバレになるので避けますが、これ、どこかの局がドラマにしてくれないかなー………。
そしたら市橋靖子さんは松たか子がいいなあ(個人的)。

あと私が加点要素にあげるのは広島の方言です。
半分四国(徳島)の方言で育った私にとって、広島の言葉は大阪や京都の言葉より近しい気がするのです。
(最初に入った広島の方言が「はだしのゲン」だったおかげで、どうもあまり良くない言葉も覚えている気がするのですが)

「うちがいうて、きくひとじゃないけえ。それより、あんた、さきに顔でも洗うてこんね。煤で真っ黒になっとる」
(中略)
「ほうじゃね」(1巻文庫版11ページより抜粋)

このやり取りは私の中にある方言で変換すると、

「うちがいうて、きくひとやないけん。それより、あんた、さきに顔でも洗うといで。煤で真っ黒じゃわ」
「ほうねえ」

って感じになるんですよ。近いんです。
語尾が「けえ」じゃなくて「けん」になるのが一番違うところだと思うのですけれども。
それでも「まるっきり同じじゃないけど空気が懐かしい」ところがとても好きなのです。
映画「この世界の片隅で」を見たときにも同じようなことを思いましたが、活字で読むと脳内でゆっくり再生できたり変換できたりするので、より楽しむことができるのです。


思えば那須先生はズッコケシリーズでも題材が株式会社設立だったり離婚問題だったり、子供には難しいのかな?というテーマでも子供に「難しい」と感じさせずに読ませていたわけで、私が感じていたよりずっとずっと素晴らしい作家さんだったのだなと思いました。
そんな作家さんの本を読んで育つことができて幸せでした。ほくほく。

この作品が書かれたのはちょうど2011年。東日本大震災の年でした。
那須先生はあとがきでそこに触れられていました。
私の大好きな那須先生のあとがきは、今回どんな感じなんだろうと思って読んだら涙腺をつかれました。
ああ、これが那須先生がこの小説を書いて一番言いたいことだったんだ。
このあとがきがもっと広まってほしいな…。

そんなわけで拙いながらも本の宣伝なわけです。
一人でも多くの方に読んでもらいたい本です。
友人にもすすめたいのですがなにしろ3冊。そして小洒落ているとは言い難い内容…うーん…。
面白いんだけどなー。誰か読んでそして語ってください。ううう。
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